最高裁判所第三小法廷 昭和28(オ)568 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人椢原隆一の上告理由(後記)第一点について。
所論は、憲法違反の主張である。しかし原判決が各証拠に基き認定した事実は、
所論の農地は訴外Dが昭和二二年三月上告人の希望を容れ昭和二三年三月末日まで
一年間を限り賃貸したのであるが、上告人は期限を過ぎてもこれを返還しないとい
うのであり、原審はさらにこの事実関係に基き、そうすると本件農地の賃貸借は一
時賃貸借であると解しなければならないと判断したのであつて、この判断は正当で
ある。そして当時の農地調整法(昭和二四年五月改正前)九条二項但書に当るこの
ような一時賃貸借の農地については、同項本文の適用なきはもちろん、同条同一項
及び第三項の適用もなく、賃貸人が期間満了の後その返還を受けるについて、解約
ないし更新拒絶の手続を必要としないものであり、またこれについて知事の許可も
必要でないことは同法の規定上明らかなところである(昭和二三年(オ)第六二号
同二四年四月九日第二小法廷判決、集三巻四号八五頁参照)。してみれば本件農地
につき被上告人が前記訴外人に解約の許可を与えたのは法律上必要な行為ではない
のであるから、単に念のために行われたに過ぎないものと解するを相当とし、原審
がこれをもつて更新拒絶の許可と解したこともなんら判決に影響のない説示に過ぎ
ないといわなければならない。従つて原審のこの解釈に対する違憲の主張は前提に
おいて失当であり採用することはできない。
同第二点について。
原判決の認定するところによれば、本件農地については、従前から賃貸借があつ
て、新たに賃借権を設定したものでないから、所論の農地調整法四条の適用はない
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場合であり、論旨は理由がない(論旨(1))。また所論は本件の場合は明らかな
一時賃貸借に当らないと主張するが、原判決の判示説明によれば原審の判断は相当
であり、また明白な一時賃貸借とは必しも所論のような場合に限らるべきものとは
いえない(論旨(2))。
その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」
(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同
法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
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